JR東海生涯学習財団が運営している美術館が神奈川県・葉山にあると聞き、行ってきました。葉山は東海エリアじゃないよね…なんでかな?
京急線に乗って、葉山エリア最寄りの新逗子駅にやってきました。
この駅、2020年3月には駅名が逗子・葉山駅に変わります。
葉山エリア側の南口に来ました。カマボコみたいな形の建物が印象的です。
目の前の南口2番乗場からバスに乗ります。
バスに揺られて20分。景色は、綺麗な海が続きます。晴れ重要。葉山マリーナや森戸神社も通るので、帰りに寄っても面白いかな。
富士山だー!
「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前」で下車します。看板が見えました。「山口蓬春記念館」という所へ向かいます。
細道が続きます。本当に記念館あるのかな…?と不安になりながらも探検気分。
急に開けて正面入り口!山口蓬春記念館です。
外観は立派な家です。記念館というより旅館ぽい。玄関でスリッパに履き替え。よそのお宅にお邪魔する感覚です。おじゃましまーす。
入ってみても家ですね。誰か住んでいそうです。山口蓬春の制作環境をそのまま保全・再現するというコンセプトだそうで、住んでいる感じがそのまま出ています。
戸のレールの数がすごい…
こうして座っていると、山口蓬春の生活に溶け込んで、絵が描けそうな気分になります。
で、山口蓬春ってどんな人?
さてここまで来て、山口蓬春(やまぐちほうしゅん)ってどんな人?とお思いの方もいることでしょう。
大正12年から昭和46年にかけて活躍した日本画家で、学生時代から権威ある帝展入選、その後も帝展特選受賞・帝国美術院賞W受賞作品が皇室お買い上げ、文化勲章受章……と、画壇での華々しい活躍は書いていてキリがありません。
1人でこんなに賞取れるなんて、どんだけ上手いんだ。期待大です。
この記念館では、そんな山口蓬春の作品が至近距離で生で見れます。
庭の花を描いた作品。本物を間近で見ると…材料が高そう!
ベースが金箔使ってるし、金をバックに安っぽくならないこの感じは、天然石を粉にした天然の岩絵の具を使っているとしか思えません。
制作現場も再現されていました。蓬春が作品制作をしていたアトリエです。
絵具皿を発見。日本画の絵具は、石や貝殻などの粉を膠(にかわ)で混ぜて描くのですが、その混ぜた作業の皿がそのまま残っております。
綺麗な色…。そして、その粉の原料は、「何なのか」によって値段がピンキリなんですよね。
さっきの絵に使われた量で、お値段一体おいくらかしら…!?
頭の中で思わず計算。
ちなみに筆者が、平成中期にパキスタン人から買ったラピスラズリ2,500円。これも、主に絵具に使われる鉱物です。33g。
これを絵の具の粉に加工する手間を入れまして…絵一枚描くのに、材料費だけで10万いってる…?
頭の中で悶々としていたら、「これが蓬春がコレクションしていた岩絵の具です」と、白い壁の扉をおもむろに開けてくださりました。
!!いっぱいあるΣ( ̄ロ ̄lll)しかも、青と緑だけだから、他の色もどこかにあるのよね!?
あの小瓶で5,000円くらいかな?…もっといくかな?大瓶もあるし、棚の中で100万円いくんじゃ…?
「100万くらいいっちゃってますよね?」と案内の方に質問しましたが、「もっとかもしれません。特注のブレンドだったそうなので。」とのお返事。
もっとか……やるな蓬春。材料費に容赦ない。絵の具の解説の展示では、絵の具の一部が紹介されていて、成分はアズライト(藍銅鉱)とマラカイト(孔雀石)が示されています。
石好きにとっては、砕いて絵に使われているという事実で「なんと贅沢な…」と、発狂モノです。
「蓬春の絵」として作品に昇華しているのは、材料に絵の腕前が負けていないからですよね。
画風は節目ごとにガラリと変わっていて、「蓬春の画風ってこうだよね~」と一言で言えず。どうやって感性を磨けばこうも変われるのか…
一流の材料を使いこなすに見合う腕前。……料理と同じで、「良い材料・良い環境・良い技術」が揃って生み出されるのが「すごい絵」なんだなぁ…としみじみ。
格式ばった高尚な品ばかりかと思いきや、愛用品棚に、令和の今、大人女子に人気のiittalaのウルティマツーレ発見。
当時出始めだったろうに……昔の人だけど、今も通用する感性。今生きてたら、今風の流行り頂点の絵を描いてたんだろうな…
どうしてJR東海が葉山に美術館を?
美術館級の巨大絵画の数々、コレクション化している高価な材料の数々。奥様の個人の管理では盗難もメンテナンスも不安だったのではないでしょうか(どこかに移動するにも、車の通れる道が接しておらず運び出すのも大変…)。
蓬春は絵も評価されて売れていましたし、美術関係の仕事も沢山していましたが、コレクションにも相当な金額をつぎ込んでいたそうで、お金の面では生活は楽ではなかったそうです。
春子夫人が知人や門下生に相談した結果、ご縁があり、JR東海の須田寛社長(当時)に繋がります。須田社長は、父親が洋画家だったこともあり、絵画に理解があったそう。
JR東海の社会貢献事業として、財団が作られ、葉山に位置する山口蓬春邸は記念館として整備されました。社会貢献事業だからこそ、これほどきらびやかなコレクションが、お手頃な入館料(おとな600円、高校生以下無料)で見れるんですね。
テレビなどでよく見る皇居宮殿の背景も…
ちなみに2階からの景色。海が見え夕日が綺麗です。真正面の景色、天皇ご一家が静養に来る葉山御用邸とテレビでよく見る小磯です。
絵のご縁やご近所なこともあり、この家には皇室関係者も出入りしてたそう!皇室の人とご近所づきあいして、絵を教えて…すごい人間関係。
台風の時にはここから身を乗り出して波をスケッチ。こんな作品も生まれました。
リアルな波のスケッチに蓬春の表現技術が加わって、荒々しくも美しい作品になっています。
最後に、こちらの作品は「楓」。
どこかで見たことがあるような…と思ったら!皇居宮殿松の間の戸の絵!
昨年(2019年)は儀式も多く、報道でよく出ていた場所です。「注目して見ると、よく後ろに映り込んでいるんですよー」と説明いただいて、ナルホド。
そう、テレビなどでよく見る皇居宮殿、その背景の一部は山口蓬春の絵だったのです…!!
実はエクスプレス予約特典にもなっている
2020年1月17日からはJR東海・西日本のエクスプレス予約「旅先の特典」に山口蓬春記念館が追加。
EX-ICカード等の提示で、通年で入館料が100円引きになるほか、新春収蔵品展(2020年4月5日(日)まで)期間中は、クリアファイルのプレゼントもありますよ!