最近首都圏などを中心に、電車内の天井に『防犯カメラが一体となっている蛍光灯』が設置されているのをご存知でしょうか。2020年7月25日に所属全車両に導入が完了したという東急線での設置の様子を、写真を中心にレポートします。
蛍光灯一体型防犯カメラって?
車両内のセキュリティ向上および車両内トラブル発生時の対応などを目的に、鉄道各社では新製車両を中心に、乗降ドア上部などに車内防犯カメラの設置が進んでいます。
最近では『天井の蛍光灯と一体となっている防犯カメラ』を搭載した車両も登場。
従来の蛍光灯と同等の長さの中に、少し短めの蛍光灯、そして端の黒い部分に防犯カメラなどを内蔵。既存の蛍光灯と交換する形で取り付けることが可能なため、既存車両や、新型車両へのさらなる台数強化に対して新規に埋め込み工事をしなくても防犯カメラが取り付けられることが鉄道事業者にとっては大きなメリットとなります。
東急が採用しているのは「IoTube」
東急では、鉄道業界として初となる4Gデータ通信機能を備えた蛍光灯型LED一体型の防犯カメラ「IoTube」を2019年、まず大井町線の一部車両で試験導入しました。
「IoTube」はソフトバンク4G回線を内蔵しているため事務所などの遠隔地から記録映像を確認することが可能になり、車両内トラブルの発生時における対応の迅速化が期待できます。
東急では試験確認後、この「IoTube」を2020年4月から順次正式導入。1両当たり4台設置を基本とし、2020年7月25日に東急電鉄所属全車両(182編成1,247両)設置が完了しました。
搭載車両内では、防犯カメラを設置している車両であることを周知するステッカーを掲出。記録映像の閲覧については閲覧できる社員を限定するなど、関係法令や社内規定に則り厳重に管理しているとのことです。
現場を見てみた
まずは防犯カメラ設置の概要説明がありました。
痴漢などの車内トラブル防止目的、また同社が所有する車両内で吊革盗難や消火器へのいたずらなどが発生していることも全車両防犯カメラ設置の大きな理由とのことです。
ただし、既存車両の設置には従来の方法だと工事費用がかさみ、また全車両設置完了にとても時間が掛かることが課題でした。また映像を見るには当該車両のカメラから記録媒体を抜かなくてはならず、例えば田園都市線の車両が乗り入れ先である埼玉県の南栗橋などにいる場合、そこまで社員が赴く必要があるといった課題がありました。
そこで今回のIoTubeを導入することに。東急所有の車両には主に長さが20mの車両と18mの車両が存在。基本的には千鳥配置にすることで、撮影範囲は死角なくカバーしているとのこと。
これまで司令所が列車の車内状況を把握するには乗務員からの列車無線による通話、すなわち『耳』のみでした。それがリアルタイムの防犯カメラという『目』が加わることで、より迅速に対応ができるように。
全車両設置完了が2日前ということで、全車両体制はまだ始まったばかりですが、関係者からは様々な面でメリットの声が出ています。
実際の車両に向かってみます。
今回見学したのは東急田園都市線「2020系」。
デビュー時に既に各号車の両端部の壁面に防犯カメラが2基付いていましたが、車内全体に死角がなくなるよう、IoTubeを各号車2台ずつ追加しています。
IoTubeの実物。これから設置のデモンストレーションをします。
黒い部分にカメラや4G通信装置などが組み込まれています。
設置にあたり車両側に基本的に工事が無く、従来の蛍光灯型LEDから交換するだけで完了します。
設置が完了しました。
写真中央上部の黒い部分が防犯カメラです。
また設置車両には、「防犯カメラ作動中」の赤いステッカーが貼り付けられています。
乗務員室あるいは司令所などにズラっと映像が出ているわけではなく、トラブルなど発生した際に閲覧権限を持った社員が必要な映像にアクセスする形です。
アクセス時の画面。映像は1分ごとにデータ化され、セキュリティ(暗号化)をかけた上で送信されているため、1~2分程度のタイムラグはあるとのことです。
全画面にした様子です。カメラは200万画素、160度広角レンズとのこと。実際に画面で見るとかなり広い範囲かつ鮮明に確認できました。
東急担当者によれば、すでにこの防犯カメラが直通先で車内トラブル対応のための一助になったとのことです。なお直通先(例えば東急田園都市線は東京メトロ半蔵門線や東武線に直通)運行中の映像確認が必要となった場合は当該区間の鉄道会社が許可を出し東急の閲覧権限を持つ担当者が確認する流れになっているとのことです。