JR西日本に、3両編成の”在来線試験車”「U@tech(ユーテック)」という車両があるのをご存知でしょうか。
現在はJR嵯峨野線を中心に試験走行をしていますが試験車ゆえに一般に乗る事は出来ず、見かけること自体も貴重な列車です。

JR西日本の試験車「U@tech(ユーテック)」
窓はカーテンなどで覆われていて車内の様子をうかがい知ることも難しい「U@tech」、どんな試験が行われているのでしょうか。
現在テストしている内容の解説をはさみつつ、実際に走行試験中の車内に同乗した様子と写真でレポートします。

京都駅30番線(特急「はるか」専用ホーム)に入線する試験列車「U@tech」
今回同乗した区間はJR嵯峨野線の京都~園部間(往復)。システムの試験は馬堀~園部間で行われました。
「次世代の鉄道オペレーションシステム」をテストしていた!
現在この「U@tech」では、現行のATS(自動列車停止装置)等にかわる、無線式による”次世代の列車制御システム”のテストが行われています。

「U@tech」中間車の車内に設置されているモニター
開発の背景とねらいは?
現在の列車制御システムは”膨大で複雑”になっています。
そこで『安全性を向上させつつ、装置を集約してできるだけ沿線から機器をなくし、安定した動作と安全で効率よい保守を目指せないか?』という観点から開発が進められているのがこの新システムです。
発展著しい情報通信技術などを活用した新しい列車制御システムを開発し、「安全性の向上」「設備数量の低減」「保守作業の省力化」を目指しています。

前面の様子を映し出すモニター
どんなシステムなの?
列車自らが走行位置を検知し、「無線」を使って地上装置に位置情報を送信します。後続の列車には地上装置から前方の列車位置などから決まる停止位置情報が送信されます。
列車は停止位置情報と速度制限箇所の情報により、自らが制限速度を計算し、列車速度がその制限速度を超えないようブレーキを制御します。
なお、このシステムはJR東日本で実用化された次世代システム「ATACS(アタックス)」をベースに開発しています。

速度などを表示するモニター
こんなことが可能になる
車両と地上が連続的に情報を送受信することにより、現行に比べてよりタイムリーに速度を制御することができます。
また他の仕組みと連携して、大雨や強風などの気象条件、駅ホームや踏切での異常などにも制御対応できるように。
さらに地上設備が簡素化されることで設備故障や輸送障害の低減を目指します。

地図および現在位置表示
現在の開発状況とこれから
2008年度より開発に着手し、吹田総合車両所構内で基本機能の試験を実施したのち、2012年度から嵯峨野線亀岡~園部間(約14km)に試験設備を設置して、この「U@tech」を使用し走行試験を実施。車内には試験機器などを配置しています。

異常検知・非常ブレーキ作動の様子(試験)
2015年6月からは車両の分割・併結、構内入換の機能や、システムが万一故障した場合、故障から復帰させるための列車位置の把握などといった異常時に対応する機能などを中心に試験を実施しています。
2017年度までに実用化に目処をつけることを目標に、引き続き開発に取り組んでゆくとのことです。

園部駅に到着した「U@tech」試験列車


園部駅構内で入換作業を行う「U@tech」試験列車


園部駅の案内板表示

「U@tech」京都方面側の先頭車「クヤ212-1」の車内

「U@tech」車内での試験作業風景

「U@tech」車内の機器類

「U@tech」車内にある、今回の新システムの車上無線局



京都駅に到着した「U@tech」試験列車
取材協力:JR西日本
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