東海道新幹線からまもなく引退する「700系」新幹線。その雄姿や『ありがとう装飾』作業を車両基地で見てきましたので、その様子を写真を中心にレポートします。
記事後半では、今回の700系引退イベントなどを担当している企画担当者にもお話を聞きながら、700系の車内も改めて探検しました。
700系って?
700系は約20年前の1999年、東海道・山陽新幹線にデビュー。
営業最高速度は東海道新幹線内が270km/h、山陽新幹線内で285km/hで、その先頭形状から『カモノハシ』の愛称で親しまれました。
「N700A」による置き換え完了に伴い2019年12月1日に定期運行が終了、2020年3月8日にラストランを迎えます。
700系『ありがとう装飾』作業
引退企画の一環として2月12日からヘッドマークとサイドステッカーによる車体装飾を実施。その装飾の瞬間です。
車両基地内に、前面の装飾作業を待つ700系新幹線の姿が!
左の作業台に乗り、まずは前面に装飾作業を行うとのことです。
作業員の方々がやってきて、作業スタート。まずは位置合わせ。
上下左右、位置がズレていないか、時間をかけて確認していました。
位置が定まり、いよいよ貼ってゆきます。
へらを使って、ボディにしっかり貼り付けます。
いよいよ剥がします…!
おお!ついに装飾された姿を現した!
…と思いきや、また何かを被せてる!?
透明の保護シートだそうです。同様に張り付けて、剥離紙を剥がしてゆきます。
最後は、丁寧にドライヤーで熱を当てて仕上げていました。
ついに、ヘッドマーク装飾つきの姿になりました!
ホーム上からは見れない至近距離で。
続いて側面のサイドステッカー装飾です。
前面同様、慎重に位置合わせをして貼ってゆきます。
サイドステッカー装飾はこんな感じです!
700系のシルエットとともに、「ありがとう」の文字。
700系引退 企画担当者の想い
スーツ姿でまじまじと最終チェックをしているこの方は…!?
『最後は綺麗な姿をみせたい、最高の状態を見て頂きたい。』
そう話すのは、新幹線鉄道事業本部 運輸営業部 営業課の延原正蔵氏。今回、700系の引退にあたり各種企画などを担当しています。
2005年入社の同氏は元新幹線運転士。見習い期間が終わり1人でハンドルを初めて握った形式が700系で、『握って動かした瞬間は今までの乗務人生の中でも1番思い出に残っている』とのこと。『700系はとても運転しやすかったです』
『特に今回力を入れたのは最後の最後、おめかしといいますか、ラストランに向けてどれだけきれいな状態で走れるかです』
運輸営業課のみならず、車両関係に携わってる人たちにも協力してもらっているのことです。
総力をあげて、特に先頭とかは何度も足を運んで、清掃のみならず補修をして汚れたところを手直ししたとのこと。
『出発式などもあるので、その時に最高の状態でお客様に見送って頂きたい』とのことで、とりわけ先頭車は屋根までしっかりと綺麗にしたそうです。
700系の車内を探検
最後に、改めて700系の車内をちょっと探検してみたいと思います。
700系は現在の東海道新幹線の主力のN700Aより窓が大きいです。
行き先表示は『幕』式。
デッキにある「車内のご案内」。700系は禁煙マークがない車両(=喫煙車)が残っています。
普通車(禁煙車)の車内の様子。
700系はJR東海所属とJR西日本の所属で仕様や内装が少し異なるのも特徴。普通車シートの色はJR東海のほうが明るい青色です。
コンセントはまだ窓側にもなく、最前列・最後部デッキ側の壁のみ設置されています。
こちらは喫煙車両の普通車車内。先程の禁煙車両に無い物があるのですが、お気づきでしょうか?
まずは空気清浄機。荷棚の上に6か所設置されています。
また車内テロップの横にも空気清浄機が前後4か所設置されています。テロップは1行の3色LED。
東海道新幹線の喫煙車両もこの700系で見納めです。
そして喫煙車両の肘掛けには、灰皿があります。
開くとこんな感じです。
こちらはデッキ/洗面周りの様子。
東海道新幹線としては和式トイレがある最後の形式。N700A以降は、男性用トイレ以外は洋式のみです。
電話コーナーの様子。N700Aにも電話はありますが、700系では個室のようになっています。また電話の上の壁には「この列車はのぞみ〇号です」というように列車名が表示されます。
今後のスケジュールは?
東海道新幹線700系の今後のスケジュールについては、2020年2月12日からこの車体装飾の状態で、2月いっぱいまで一部の臨時「のぞみ」として運行します。
充当列車は特設サイトに掲載されています(一部、装飾なしのJR西日本編成での運行もあり)。また団体専用列車も運行されます。
そして東海道新幹線700系ラストランは2020年3月8日の臨時「のぞみ315号」。先ほどの延原正蔵氏によれば、指定席(1302席、予備席除く)は34秒で完売。
ラストランは『新幹線の父』に見送られて…?
ちなみに当日のラストラン列車は、新幹線計画を推し進めた十河(そごう)信二 元国鉄総裁のレリーフがある東京駅19番線から発車予定。
JR東海によると19番線となった理由はそれ(レリーフ)ではないそうですが、くしくも『新幹線の父』に見送られながら最後の東海道新幹線700系列車が出発することとなりそうです。
【2020/3/2追記】JR東海は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため3月8日ラストラン列車は運休することを発表しました。
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