2020年3月25日、JR東海の超電導リニアL0系『改良型試験車』がお披露目されました。その様子を写真を中心にレポートします。
L0系って?
2027年の超電導リニアによる中央新幹線(品川~名古屋)開業に向け、山梨リニア実験線にて2013年から営業仕様「L0(エルゼロ)系」の試験車による走行試験を実施してきました。
今回、リニア営業車両の仕様策定に向け、更にブラッシュアップさせた改良型の試験車(先頭車・中間車1両ずつ)を製作、そのうち先頭車1両が完成しお披露目されました。
走行試験の際は、既存のL0系先頭車・中間車と組み合わせて走行する予定です。
改良型試験車はどこが変わった?
①車内用電源方式の変更
従来のL0系に搭載していたガスタービン発電装置(灯油を使用して、車内用の電気を発電する装置)を廃止し、誘導集電方式(電磁誘導の作用を利用して車内用の電気を非接触で供給する)に変わります。
②先頭形状の改良
発電装置・排気口が無くなることから、これまでの走行試験で得られた結果をもとに先頭形状を改良。凹凸を際立たせる・先端部を丸みを帯びるなどし、従来のL0系と比較して空気抵抗を約13%下げます。
③前照灯・前方視認用カメラ位置が変化
従来のL0系では先端の下の方にあった前照灯・前方視認用カメラが上部となり、前方の視認性を向上させます。
④帯デザインの変化
従来のL0系から青帯のデザインが変更に。より曲線感のあるデザインになりました。
お披露目の様子
改良型試験車の先頭車は、日立製作所(山口県・笠戸事業所)でお披露目されました。
担当者によれば、今回の最大の改良点は先述①のガスタービン発電装置を搭載していないこと。
地上側のコイルから非接触で車体の集電コイルを通じて供給される仕組みに変わりました。
イメージとしては置くだけでスマホが充電できる充電器と同じとのことですが、時速500kmで走行しながらの給電というのがポイントです。
リニア開発の長い歴史の中で、技術の進歩によって実現したとのことです。また、車体には蓄電池が搭載され、非常時にはそれで対応します。
形状改良については『全体を丸く』ではなく、えぐるように凹凸をつけたことで、従来のL0系試験車ではノーズですくいあげていた空気を、八方にかき分けて空気のながれをいなす構造に。
全照灯とカメラが無くなったことで、何も無くなった先端部。
全照灯とカメラは、上部に小窓を設けて移動。新幹線の運転台のようなデザインに。視認性が向上。窓みたいに見えますが無人です。
長い先頭部は15m。長さは従来のL0系と変わらず、形状のみ変化。
先代の試験車「MLX01」は9.1m、「MLX01-901」は23mと、先頭車のほぼ全部だったものが、走行試験の過程でL0系では15mが最適とされた経緯があります。
側面の三角形の影は、中の機器を冷やすための空気取り込み穴です。
ヘッドライト(上)とテールライト(下)。
このL0系改良型試験車は、5月末頃より実験線で走行開始予定となっています。
写真撮影(特記以外)・取材:梛野 桃子
編集・解説:福岡 誠