【2016/11/05公開】
【2017/09/01 中盤、2016年度テロ訓練の様子を追加掲載】
鉄道業における最重要責務とも言える「安全輸送」。乗客の目に見える取組だけでなく、“見えない”取り組みも沢山あります。
今回は伊豆急行のPR駅長『オモシロ駅長』の1人である筆者が、伊豆急行の裏側に潜入。
同社の安全の取り組みについて、普段乗客としてなかなかみられないものを中心にご紹介します…!
駅員さんが部屋にゾロゾロ…中で行われていたのは?
伊豆急行線の研修室に、沢山の駅員さんたちがゾロゾロ入ってきました。
駅務講習会といい、定期的に行われている「駅員さんの研修会」です。
この日は、まず地元の消防の方によるAEDの取り扱い方法についての講義や指導が行われました。
人形を使って実際にAEDを使用する訓練も。職業上「使う場面が訪れるかもしれない」という緊張感のもと、皆さん真剣な表情で練習を行っていました。
その後は、伊豆急線内の「踏切非常ボタン」や「障害物センサー」の仕組みの確認、作動した場合の駅員の対応手順などについて講義と確認が行われていました。
新旧の非常ボタンで操作方法が異なるなどアドバイスも。踏切一つとってもそのような注意点があるのですね。
その後は実際の踏切に向かい、装置の現物や駅員としての対応方法を確認。
また実際に踏切非常ボタンを押されたパターンを想定し、上司から「君だったらどうするか」というように質問し、皆で考えて答え合わせしながらシミュレーションをしているのが印象的でした。
安全運行を支える日々の取り組み
日々安全について、今回見ることのできた講習以外ではどんな取り組みをしているのか、伊豆急行に伺ってみました。
線路の保守・管理
保線係員は線路や法面などを常に安全な状態に保つため、徒歩や列車添乗による点検・確認、保守作業を計画的に行っています。
また日中の作業のほか、夜間作業においても路盤の整備や改良工事などを実施しています。
車両の保守・管理
車両係員は安全・快適な列車運行を維持するため、伊豆高原駅構内にある車両基地で車両機器の機能試験や各種定期検査、改良などを行っています。
現在伊豆急行には営業車両が69両あり、清掃係員21名、保守管理係員22名が交代で作業しています。
車両の検査は全部で「4種類」あります。
- 10日に1度行う「列車検査」
- 3か月に1度「月検査」
- 4年に1度行う「重要部検査」
- 8年に1度行う「全般検査」
このようにきめ細かに検査が行われています。
設備面の安全対策
安全関連投資として、2015年度は設備投資総額約8.9億円のうち、約5.6億円を投入。トンネル・法面などの補強や改修工事、電気設備などを更新しました。
安全確保のための施設・設備
伊豆急線は海沿いも走ります。津波対策として、高台への避難が困難な海岸線で列車が緊急停止した場合の乗客の避難ルートを確保するため、片瀬白田駅~伊豆稲取駅間の2か所に避難通路を設置。避難時は係員が誘導します。
教育・訓練の実施
「教育訓練計画」に基づき、定期的に講習会等による教育・訓練を実施し、事故や障害が発生した場合でも安全・確実・迅速な対応ができるよう、技能や知識の向上を図っています。
2014年度は、踏切道にて乗用車との衝突事故を想定した、異常時総合復旧訓練を伊東警察署、伊東市消防本部と合同で実施することにより関係各所と連携等の確認を行いました。
また2016年度はテロ訓練を実施。列車内で爆発物らしき不審物を発見したことを想定し、異常時連絡体制・乗客を安全に避難誘導する初動対応の確認強化・列車内という限られた場所の中で行う爆発物処理について、伊東警察署および静岡県警機動隊と連携し実践さながらの訓練が行われました。
このように、普段見えない所でも、安全運行のために様々な取り組みが行われているのです。
試運転に同乗!安全運行のための乗務員訓練
伊豆急行はJR線と相互直通しており、特急「踊り子」号をはじめ色々な車両がやってきます。伊豆急行線内は、JRの車両も伊豆急行の運転士・車掌が乗務します。
これまで走った事のない車種が運行される場合は「乗務員訓練」というものが行われます。
今回2016年7月にデビューしたJRリゾート車両「伊豆クレイル」の伊豆急線内試運転(乗務員訓練)に立ち会うことができましたので、その様子をお届けします。
デビューを控えた「伊豆クレイル」が伊豆急行線に初入線。初めての車両に運転士さんたちも少し緊張気味!?
試運転出発前に、車両の特性や重要な機器類の場所などを入念にチェックしていました。
おや、怪しい機器が床に…気になって伺ったところ保線スタッフの方で、加速度計を使い揺れなどをチェックしていました。
乗務員のみならず保線スタッフの方も一緒に乗って色々チェックするのですね。
車掌さんも車内放送やドアの開閉などの操作をチェック。またこの列車で車内SOSボタンが押された場合の動きなどもチェックしていました。
電車は車と同様、車種の違いにより加速・ブレーキのかかり方などに違いがあります。この訓練でそのような“感触”をつかみ、スムーズな営業運行に生かされるのですね。
「伊豆クレイル」では食事や飲み物類も提供。走行中やブレーキを掛けるときなど、ワインボトルが揺れないか、グラスからこぼれないか、といったチェックも行っていました。
この点は、リゾート列車ならではの訓練という感じでした。
いかがだったでしょうか?
安全の取り組みは鉄道会社によって多少異なる部分もあるかとは思いますが、普段電車を利用している時には全く想像つかないような色々な取り組みがあることがお分かり頂けたかと思います(筆者も勉強になりました!)。
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撮影:福岡誠
取材協力・☆印写真提供:伊豆急行
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伊豆急行や伊豆エリアのPR、駅を拠点とした地域の活性化などに取り組むべく計8組が活動中。鉄道新聞®編集長の筆者(福岡誠)も応募し「鉄道新聞駅長」として活動。
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