2023年春までの運行

【乗車レポ】SL銀河に乗ってSL銀河ルームにも泊まって宮沢賢治の世界観に浸ってきた

  • 公開 2021.12.15
  • Posted by 梛野 桃子

2021年10月30日、岩手県の釜石線を走る観光列車「SL銀河」に乗車、さらに釜石にあるホテルのSL銀河ルームにも宿泊してきました。その様子を写真を中心に記事で紹介します。


【2022/3/24追記】関連記事:「SL銀河」の機関車C58239のお家を訪ねてみた
牽引機関車「C58239」のメンテナンスの裏側にも密着してきました!


「SL銀河」に乗る!


「SL銀河」って?


「SL銀河」は岩手県のJR釜石線を走る観光列車で、宮沢賢治作の童話『銀河鉄道の夜』をテーマにした世界観になっています。


岩手県の花巻〜釜石間を約4時間半かけて走ります。


筆者は元「石と賢治のミュージアム」(岩手県一関市)の学芸員で、今も宮沢賢治の研究をしているため、念願叶っての乗車です!


花巻駅からスタート


今回は土曜日の下りルート(花巻→釜石)に乗ります。


花巻駅。宮沢賢治の街らしく、駅舎も童話の雰囲気が出ています。


東北新幹線新花巻駅から直接「SL銀河」に乗り換えられます。が、一度釜石線で花巻駅まで向かって、全区間乗ってみました。


SL銀河がやってきた!



「SL銀河」が花巻駅ホームに入ってきました。汽笛と煙で、ホームでの熱狂ぶりがすごいです!蒸気を噴き上げる車体は近づくと熱を感じます。


「SL銀河」をけん引する、機関車「C58 239」


機関車のC58 239は1940年、宮沢賢治没後の製造ですが、岩手県民にとっては39年間、県営運動公園内交通公園の静態保存で見慣れたお馴染みの存在です。



それが、東日本大震災からの復興のシンボルとして再び動き出したのです。スゴいなあ…!



ホームの広場ではダァスコダァダァと太鼓を打ち鳴らして、花巻に伝わる伝統的な踊り鹿踊(ししおどり)が力強い舞を披露しています。宮沢賢治の作品にも出てくる踊りです。



その時、花巻駅の川村さんから「ここを見るんだよ!」とアドバイスが。



「花巻を出て、遠野で停車して釜石へ」って行程が書いてあるんだよ…と。暗号ですね!



さて、今回はJR東日本 盛岡支社 営業部 観光推進室 鈴木和枝さんに案内していただきました。



車体の外観は青色をベースに、『銀河鉄道の夜』の物語に登場する天の川の星座・動物・植物が描かれていて美しいです。トーンが異なる8色の青を塗り分けて夜が明けて朝へと変わりゆく空を表現しています。4号車から1号車に向かって物語の順になっています。



鈴木さん一押しの外観の見どころは、SL銀河のロゴとのことです。『中でも白鳥座の隣のロゴは一番深い青色とのコントラストで際立っていて美しいですよ』



乗務員さんの制服も、SL銀河特別仕様♪車内への期待も高まります。早速乗ってみましょう!


SL銀河の車内へ!


宮沢賢治の生きた大正から昭和の世界観を表現した車内で、赤い座面にステンドグラスや磨りガラスの装飾が印象的です。



荷物棚は岩手特産の鋳物をイメージしたものになっています。印象的な磨りガラスは「楢の木」がモチーフです。



SL銀河は10:36、花巻駅を発車。約4時間半の旅がスタートです!


SL銀河は各号車に宮沢賢治にまつわる品々と、沿線や東北ゆかりの伝統工芸品のギャラリーが設置されています。少しずつ探検してみます♪



3号車には、車両のコンセプトになっている『銀河鉄道の夜』をテーマにしたギャラリースペースがあります。



『銀河鉄道の夜』冒頭文の直筆複製原画が展示されています。書き直しの跡がものすごいです。実は『銀河鉄道の夜』って未完成の作品なんですよ!



その隣にとても良いものがありました!物語の中の重要アイテムで、これがないと幻想世界から現実世界に帰ってくることができないジョバンニの「切符」です。これがあれば生きて下車できますね。一安心です♪



4号車は車内限定品と飲食販売のショップとギャラリー、広いトイレがある車両です。



C58239復活までの記録も写真で紹介されています。このソファーの座り心地が素晴らしかったです。



地元の材料を使った遠野ビールC58、青も赤もそれぞれに爽やかな香りが素敵!コップに注いだ方が香りがもっと広がるのでおススメです。



SL銀河弁当もあります!お弁当は売り切れになる場合もありますので、早めの確保を!ちなみに新幹線でお馴染みの、いわゆる『スゴイカタイアイス』もありました。



SL銀河弁当を買って、席で頂きました。ホタテが大きい〜!ご飯の中にもホタテがいっぱい隠れています。中央にある丸い漬物は、花巻の特産品「金婚漬(きんこんづけ)」です。



2号車では賢治さん創作のイーハトーブという理想郷を実現しようとした足跡が紹介されています。「本当の幸い」を求める作品がコンセプトにあるからか、車内がなんとなくおおらかな雰囲気です。



エスペラント語の駅名標一覧は圧巻。岩手で耳にする単語が、ここに由来するのだと納得します。



SL銀河車内には、そこここにフリースペースの椅子が置いてあるので、他の車両を見学しながらゆっくり腰掛けられます。


めがね橋(宮守川橋梁)を渡る


SL銀河の撮影スポットとして有名な「めがね橋」を渡ります!鈴木さんから『乗るのも楽しいですが、次は是非めがね橋を走るSL銀河を見てくださいね!力強く走るSL銀河を見ると元気が出るんです』とメッセージが。


沿線の道の駅からも沢山の人が手を振っています!


『みんな嬉しそうに手を振ってくれるでしょう?手を振ってくださいってお願いしてる訳ではないんです。沿線のみなさんが喜んで迎えてくださっているんです。』SL銀河について話す鈴木さんが本当に嬉しそうで、SL銀河が大好きなのが伝わってきます。



『沿線の移りゆく岩手の景色、人柄、そういった周囲の環境も魅力なんです。』


遠野駅停車タイム



遠野駅に着きました。ここでは約1時間19分の停車時間があり、機関車を切り離して給水作業を行います。



遠野駅に着いたら、早々に機関車は切り離されて給水です。SLは大量の水を必要とします。どんな水道かと思ったら、消火栓から給水するんですね。



命綱を付け替えながら、石炭も取り出しやすい位置に移動。



さて、停車時間が1時間以上あるので、改札を出て遠野市街地に出ることも可能です。乗客に配られるチラシです(筆者乗車日現在の情報です)。



再び、連結♪



車内に戻ると、素敵なカゴをお持ちのアテンダントさんに遭遇。中身が何か気になります。



なんと、カゴの中身は消毒セットでした!乗客が下車するタイミングや離席しているブースをマメに消毒されているのです。感染対策も世界観を壊さない配慮が嬉しいです。


再び走り出すと、陸中大橋駅前後がトンネルが多いので、また車内散策してみましょう。



2号車ライブラリーには貸し出し可能な書籍が沢山。



あれ?賢治のコトバ。ガチャ⁉︎1回100円…やってみましょう♪



『十力の金剛石』出ました!宝石が沢山出てくる素敵なお話です。ガチャで出た言葉の作品を車内のライブラリーで読むのも楽しいかもしれません♪


1号車は走行中の車内にプラネタリウム!世界で初めて光学式プラネタリウムが列車に搭載されました。



内容もSL銀河オリジナルなのですが、残念ながら筆者が乗車したときは利用中止になっていました。現在は利用できますが、新型コロナウイルス感染状況により、利用中止になることがあります。



アテンダントさんが3分程で見られるプラネタリウムの二次元バーコードを案内しています。好きな場所で見ることができるので便利ですね。



乗車時はちょうど紅葉のシーズン。美しい景色とSLの煙と煙の影が流れていきます。SLはトンネルに限らず煤が入ってくるので、マスクがなんとなく灰色になってきています。


JR東日本管内で最も高い鉄の橋



ものすごい谷底…陸中大橋駅に向かう紅葉の谷は、釜石線を全線開通する上で最大の難所だった仙人峠です。この区間はループ線になっており、谷底にこの後走る線路が見えています!



陸中大橋駅を過ぎると、登ってきた鬼ヶ沢橋梁が見えます。JR東日本管内では最も高い鉄の橋です。


釜石駅に到着


いよいよ、終着駅の釜石駅が近づいてきました。



可愛いSL銀河の検修庫!釜石駅到着直前が一番間近で見れるタイミングです!



釜石駅でも賑やかなお囃子の音と共に、迫力の虎舞でお迎えです!



15:10、JR釜石線の観光列車「SL銀河」は無事、終点釜石駅に到着しました。あっという間の4時間半でした。



機関車と客車が別れて去っていきます。さようならSL銀河。



終点釜石駅で乗り合わせた方達とお別れの挨拶をしながら、車内で初めて会う人と言葉を交わして別れるというのがまさに『銀河鉄道の夜』の物語そのものだと思いました。


…さて、SL銀河の旅はまだ終わりではありません



この釜石駅に隣接している、ホテルフォルクローロ三陸釜石の「SL銀河ルーム」に宿泊してみます!

【宿泊レポ】SL銀河客車と添い寝!?ホテルフォルクローロ三陸釜石「SL銀河ルーム」


SL銀河に乗車するには?


SL銀河は全車指定席となりますので、乗車券のほかに指定席券が必要です。指定席券はみどりの窓口、指定席券売機、びゅうプラザ、主な旅行会社および「えきねっと」で購入できます。


2021年内は12月5日まで運行。2022年は4月から初冬まで、2023年は春のみの運行を予定しています。詳細は、JR東日本の「SL銀河」ページをご確認ください。

※SL銀河は、2023年春をもって運行を終了します。


リンク


【密着レポ】「SL銀河」の機関車C58239のお家を訪ねてみた


JR東日本「SL銀河」ページ


記事内の情報は全て掲載時点のものです。

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